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ベッドから降りてスリッパを履くと、頭の血が一気に下がって、
目の前が真っ暗になりました。
わたしは思わずベッドに手を付いて、体を支えました。
Qさんが、わたしの腕を取りました。
「大丈夫?」
わたしはQさんの手を借りて、どうにか車椅子に腰を下ろしました。
車椅子に乗って、1週間ぶりに見る廊下は、どこか新鮮でした。
トイレの入り口で車椅子から降り、手すりにつかまりました。
寝たきりだったので、足の力が弱っていました。
個室に入って、便器にまたがりました。
腰に力を入れましたが、便秘していたせいか、なかなか出てきません。
外にQさんを待たせているので、気が逸りました。
「んーーーー!」
手すりを握りしめて、お尻に力を込めました。
少し、出てきました。
わたしは真っ赤になって、力を振り絞りました。
切れるんじゃないかと思うぐらい、お尻の穴がぎりぎりまで広がって、
やっと、かちかちに硬くなったものが、数センチ出てきました。
「はあ、はあ、はあ……」
そこで、息が切れてしまいました。
膝の力が抜けて、ずり落ちそうになる体を、手すりにつかまって支えました。
いくら力を込めても、それ以上出てきません。
いったんそこで切ろうと思っても、硬すぎて千切れません。
貧血とは違った意味で、目の前が暗くなりました。
わたしはまさに、進退窮まりました。
あまりに時間がかかりすぎたせいか、外からQさんの声が掛かりました。
「○○ちゃん? 大丈夫?」
何と返事して良いか、わかりません。
こんな姿を見られるなんて、恥ずかしすぎます。
「ホントに大丈夫なの? 返事して!」
ドンドンと、扉が叩かれました。
わたしはもう何も考えられなくなり、切れ切れに口にしました。
「Qさん……たすけて」
鍵が勝手にかちゃりと動き、扉が開きました。
わたしは手すりにつかまって、下を向いて泣きました。
汗ばんだ首に、Qさんの指が触れました。
「脈が速いわね。気持ち悪いの?」
「あの……あの……」
「どうしたの?」
「う○こが……」
わたしは目をつぶって、いますぐ心臓が止まってしまえば良い、と思いました。
耳許で、Qさんの優しい声がしました。
「すぐ戻るから、そのままで居て」
Qさんが立ち去った後、わたしは手すりに突っ伏して泣いていました。
ぱたぱたとスリッパの音を立てて、Qさんが戻ってきました。
「おまたせ」
見るとQさんは、右手に薄いゴムの手袋をはめていました。
「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね」
Qさんの指が、お尻の穴に触れました。
わたしは逃げようとしましたが、Qさんの左腕にがっちりと抱き留められました。
Qさんの指が1本、限界まで広がったお尻の穴とう○この間に滑り込みました。
お尻の穴が裂ける、と思いました。
「ああああああああ!」
わたしは恐怖に絶叫しました。
直腸の中で、Qさんの指がうごめくのを感じました。
ぼとぼとと、う○こが便器の中に落ちました。
お尻の穴を広げていたものが、無くなりました。
Qさんは指を抜いて、わたしのお尻を、トイレットティッシュで拭きました。
それから、ゴム手袋を外して、裏返しにしました。
「立てる?」
ずっとしゃがんでいたせいか、足が痺れていて、
Qさんの腕を借りないと、立ち上がることさえできませんでした。
病室のベッドに戻っても、わたしはまだ虚脱していました。
お尻の穴には、まだ太くて硬いう○こが広げている感触が、残っていました。
Qさんが食膳を持ってきた時も、わたしは顔を見ることができませんでした。
それでも、Qさんは何も起こらなかったかのように、接してくれました。
その後Qさんが、あのトイレでのことを口にしたことはありません。
病棟の噂にもなりませんでした。
看護婦さんというのは、あんなコトまでするんだ、とわたしは胸に刻みました。
自分も大きくなったら、人を助けられるようになりたい、と思いました。
私は中学の時の親友です。でも、ものを隠されたりされていました。このことはひみつ。と言われていたけど。