132:



「…………」

もみもみ。

「……痛い」

もみもみ。

「……手、どけて」

「……ちっ、アンタはなんでそんな冷静なん?」

Uがようやく、手を引っ込めました。
わたしが騒がないので、張り合いに欠けたのでしょう。
わたしは単に、突然のことで全身が硬直していたのですが……。

「U……そういう趣味、あったの?
 ハッ、もしかして、Vとも?」

そこで振り向いてVに目をやると、羨ましげな目つきをしていたので、
疑惑が確信に変わりかけました。

Uがあわてて手を振りました。

「ちゃうちゃう! そんな趣味あれへん。
 今のは冗談やんか。マジに取らんといて」

「でも……」

わたしは疑いの眼で、Uをじーーーと見つめ続けました。
ふい、とUが視線を逸らしました。

「……やっぱり」

「アホか! アンタの目、怖すぎや。Vもなんとか言いぃな」

Vがうつむいて、淋しげにつぶやきました。

「Uちゃん、わたしが触ると逃げるのに、○○ちゃんだといいんだぁ」

「V、アンタそんなん言うたら逆効果やん!
 ○○、誤解せんといてな。Vがあんまりべたべたするよってに、
 うっとかった(鬱陶しかった)だけや」

「U……自分にされたくないことを、人にはするのね」

わたしが氷点下の眼差しを送ると、Uは白旗を揚げました。

「もうせえへんから、許してぇなー」

ふだん強気なUのあわてぶりを見ていると、怒りが薄れていきました。

「わかった」

「○○ちゃん、わたしも1回だけしていいー?」

「ダメ。しようとしたら、帰る」

「Uちゃんだけずるいよー」

3人とも裸になると、体格の違いが際だちました。
一番大柄なVは、胸も腰も平均以上に成長していました。
小柄なUでさえ、胸はわたしより大きく、陰毛も生えかけています。

わたしが向ける食い入るような視線に、Uが苦笑しました。

「なにジロジロ見てるんや? そんな珍しいモンとちゃうやろ?
 早う入ろ」

わたしが先に湯船に浸かり、UとVが交替で背中を流しました。

「○○、ホンマにほっそいなー。何キロあるん?」

わたしが体重を答えると、Uは驚いたようでした。

「わたしより軽いやん! ご飯ちゃんと食べてるんか?
 こっちぃ。背中流したる」

わたしが立ち上がると、Vがわたしのお腹を見て声を上げました。

「お腹ぺったんこだー。触っていい?」

「ダメ」

「ケチー。わたしのお腹、つまんでいいからー」

Vがお腹の肉をつまんで見せました。少し、分けてほしいと思いました。
自分で試してみると、皮しかつまめません。

「…………ハァ」

わたしが洗い場で腰を下ろすと、泡立ったスポンジの感触が背中で上下しました。

「元気出しいな。まだ中1やん。今はホネホネやけど、
 まだまだ胸かて大きゅうなるし、毛も生えてくるて。
 お菓子ばーっかり食べてVみたいに太るよりマシや」

「わたしそんなに太ってないよー」

風呂から上がってみると、1人で入ったときより疲れたような気がしました。
ふたたびパジャマを着て、さっきとは違う部屋に案内されました。

Uの部屋のシングルベッドでは狭すぎるので、
客間のダブルベッドに3人で寝ることになったのです。
わたしを真ん中にして、川の字の形に寝そべりました。

「○○、もう眠いんか?」

眠気が募ってきていましたが、せっかく初めてのお泊まりに来たのです。
少しでも長く、話をしたくなりました。
わたしが首を横に振ると、Uが芝居がかった口調で宣言しました。

「それやったら、寝るまで作戦会議や!」

「……作戦、って?」

「○○は危機感足りへんなぁ……。
 アンタは、いやわたしらは、テストより大きい危機に直面してるねんで?」


残り127文字