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「…………」
もみもみ。
「……痛い」
もみもみ。
「……手、どけて」
「……ちっ、アンタはなんでそんな冷静なん?」
Uがようやく、手を引っ込めました。
わたしが騒がないので、張り合いに欠けたのでしょう。
わたしは単に、突然のことで全身が硬直していたのですが……。
「U……そういう趣味、あったの?
ハッ、もしかして、Vとも?」
そこで振り向いてVに目をやると、羨ましげな目つきをしていたので、
疑惑が確信に変わりかけました。
Uがあわてて手を振りました。
「ちゃうちゃう! そんな趣味あれへん。
今のは冗談やんか。マジに取らんといて」
「でも……」
わたしは疑いの眼で、Uをじーーーと見つめ続けました。
ふい、とUが視線を逸らしました。
「……やっぱり」
「アホか! アンタの目、怖すぎや。Vもなんとか言いぃな」
Vがうつむいて、淋しげにつぶやきました。
「Uちゃん、わたしが触ると逃げるのに、○○ちゃんだといいんだぁ」
「V、アンタそんなん言うたら逆効果やん!
○○、誤解せんといてな。Vがあんまりべたべたするよってに、
うっとかった(鬱陶しかった)だけや」
「U……自分にされたくないことを、人にはするのね」
わたしが氷点下の眼差しを送ると、Uは白旗を揚げました。
「もうせえへんから、許してぇなー」
ふだん強気なUのあわてぶりを見ていると、怒りが薄れていきました。
「わかった」
「○○ちゃん、わたしも1回だけしていいー?」
「ダメ。しようとしたら、帰る」
「Uちゃんだけずるいよー」
3人とも裸になると、体格の違いが際だちました。
一番大柄なVは、胸も腰も平均以上に成長していました。
小柄なUでさえ、胸はわたしより大きく、陰毛も生えかけています。
わたしが向ける食い入るような視線に、Uが苦笑しました。
「なにジロジロ見てるんや? そんな珍しいモンとちゃうやろ?
早う入ろ」
わたしが先に湯船に浸かり、UとVが交替で背中を流しました。
「○○、ホンマにほっそいなー。何キロあるん?」
わたしが体重を答えると、Uは驚いたようでした。
「わたしより軽いやん! ご飯ちゃんと食べてるんか?
こっち
わたしが立ち上がると、Vがわたしのお腹を見て声を上げました。
「お腹ぺったんこだー。触っていい?」
「ダメ」
「ケチー。わたしのお腹、つまんでいいからー」
Vがお腹の肉をつまんで見せました。少し、分けてほしいと思いました。
自分で試してみると、皮しかつまめません。
「…………ハァ」
わたしが洗い場で腰を下ろすと、泡立ったスポンジの感触が背中で上下しました。
「元気出しいな。まだ中1やん。今はホネホネやけど、
まだまだ胸かて大きゅうなるし、毛も生えてくるて。
お菓子ばーっかり食べてVみたいに太るよりマシや」
「わたしそんなに太ってないよー」
風呂から上がってみると、1人で入ったときより疲れたような気がしました。
ふたたびパジャマを着て、さっきとは違う部屋に案内されました。
Uの部屋のシングルベッドでは狭すぎるので、
客間のダブルベッドに3人で寝ることになったのです。
わたしを真ん中にして、川の字の形に寝そべりました。
「○○、もう眠いんか?」
眠気が募ってきていましたが、せっかく初めてのお泊まりに来たのです。
少しでも長く、話をしたくなりました。
わたしが首を横に振ると、Uが芝居がかった口調で宣言しました。
「それやったら、寝るまで作戦会議や!」
「……作戦、って?」
「○○は危機感足りへんなぁ……。
アンタは、いやわたしらは、テストより大きい危機に直面してるねんで?」