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知らないところで話題に上っていたというのは、新鮮な驚きでした。
ふむふむと、今更ながらに小学校時代のクラスの雰囲気に納得しました。
「……せやけど、あんまし応えてへんみたいやなぁ?
気にならへんの?」
「なにが?」
「せやから! こんだけ無茶苦茶言われとって腹立たへんのかっちゅーこと!」
「わたしの知らないところで、知らない人が何を言っても、
わたしには関係ない」
「うーん……噂を信じるアホもおるんちゃうか?」
「Uはわたしの噂を信じた? Vは?」
UとVは揃って首を横に振りました。
「アホらし。そんなん直に喋ってみなワカランやん」
「わたしは、○○ちゃんをカッコイー、って思ってた」
わたしはUと顔を見合わせて、Vに尋ねました。
「格好良いって、なにが?」
「クラスで無視されてるのに、○○ちゃんは学校休まなかったでしょー?
わたしが仲間はずれにされたときは、学校休んで泣いてた」
Uが転校してくる前、Vはいじめられていたのでした。
空想の世界の話を真顔でするので、嘘つき扱いされていたようです。
「わたしは鈍くて気がつかなかっただけ。格好なんて、良くない。
とにかく、UやVが信じてくれてるんだったら、噂なんて関係ない」
「まぁ○○が気にしてへんのやったらエエけどな……。
わたしやったら怒鳴りこんでるとこや」
Uは、まだ納得のいかない様子でした。
「そんでな。ちょーっと気になるコトがあるんやけどな。
この際やから聞いてエエか?」
「なに?」
「R君との噂もやっぱりウソなん?」
「R君の噂って……R君も噂になってたの?」
「あのなぁ……アンタ、R君と別れたっちゅうんもデマか?」
「別れた、って?」
「だ、か、ら、R君と付き合うてたんと違うのん?」
「誰が?」
「アンタやがな!」
「ええっ!? わたしが?」
「びっくりするんはこっちや……。
ハァ……コレは半分信じとったんやけどなぁ……。
アンタとR君がラブラブやっちゅうんは公認やったんやで」
わたしは驚きのあまり、ぽかんとしました。
「誰が公認したの……?」
Uはすっかり呆れているようでした。
「Vもたいがいボケてるけど、○○も負けてへんなー。
アンタ、ようR君と一緒におったやろ?
方向違うのに肩並べて帰っとったし」
「R君って……家の方向違うの?」
「アンタ、同級生やったのにR君の家も知らんのか?」
「…………」
そういえば、卒業アルバムでR君の住所を見かけた覚えはありました。
でも、わたしは方向音痴だったので、それがどの方角かわかりませんでした。
「アンタなぁ……そらあんまり殺生やで……。
仲間はずれにされてるアンタに近づくなんて、偉いやっちゃと思うてたのに。
そしたら、卒業式の日にR君を振ったちゅうんもデマか」
「卒業式の後に、R君と会ったのはホントだけど、なんにも話してない」
「卒業式の日にアンタと別れてすぐ、R君が死にそうな顔しとったちゅう
目撃証言があるんやけどなー。いったいなんやったんや?」
Uは首を傾げました。わたしも首を傾げました。Vも首を傾げました。
「まぁコレはわたしも信じてへんかったけどな、
アンタがR君に自殺モンのきっついコト言うて振ったちゅう噂やで」
「わたし、そんなこと言ってない……言ったのは『なぁに?』だけ」
「ちょっと待った!
アンタはR君に呼び出されとったんか?」
「うん。裏庭の木の下に来てくれ、って」
「それで?」
「R君はなんにも言わないで帰っちゃった。
なんだったのかなぁ?」
UはVと顔を見合わせて、黙り込んでしまいました。
居心地の悪い沈黙が、わたしたちを包みました。
「U、わたしなにか、変なコト言った?」
Uは深々とため息をついて、か細い声で言いました。
「アンタなぁ……わたしもさすがにR君に同情するわ……。
あの木の下に呼び出されたら、告られるに決まってるやん」
「告白はされてないんだけど?」
「いっしょやっちゅーに!」
「そうだよー。○○ちゃんひどいよー」
孤立無援の態勢に追い込まれて、わたしは縮こまりました。
「でも、だとすると、どうしてわたしを好きになったのかな?
まだ信じられないんだけど」
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殺して
ウザクテウザクテ
殺してくれるならこれで連絡して下さい
俺はヒントを言うと酒井杏菜の元カレです