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南国の大きな花がプリントされた、トロピカル調のビキニでした。

「えー、そんなことないよー、夏だからだいじょうぶだよー」

ぜんぜん理由になってない、と思いました。
わたしはビキニを返して、Uの持ってきた白いワンピースを手に取りました。

「白い水着って、透けるんじゃない?」

「どうせ○○は泳がへんのやから、かめへんやん」

「それもそうね」

試着して、襟が首のところまである、その白い水着を買いました。

休憩所で待っているお兄ちゃんたちは、お互いに今日が初対面です。
YさんとXさんはあまり話が合いそうにないし、
まだぎこちない雰囲気が残っているだろう、と思いましたが、
休憩所に戻ってみると、和やかに談笑していました。

お兄ちゃんに水着の包みを差し出して、鞄に入れてもらいました。

「なんだこれ?」

「ないしょ……。お兄ちゃんはなんのお話してたの?」

「ん、ああ、Yさんがカメラに詳しいっていうから、
 いろいろ教えてもらってたんだ。
 Xさんは音楽に詳しいから、楽器のこと聞いたりな。
 俺もギターだけじゃなくて、フルートでも吹いてみようかな」

「わたしも聴いてみたい」

お兄ちゃんならきっと、すぐにフルートもマスターするだろう、と思いました。

「アンタ、なに2人の世界作っとるんや。
 Vに感化されてるんと違うか?」

Uがそばに居るのを忘れていました……。

その後は、6人であてもなくそぞろ歩きました。
ショーウィンドウに、去年の夏にわたしが着ていたのとよく似た、
白いワンピースが飾ってありました。

「○○、あれ、よく似てるな」

お兄ちゃんも気が付いたようです。

「もうあれは着ないのか?」

「背が伸びたから……」

「そうか……じゃあ、F兄ちゃんのお土産代わりはあれにしよう」

試着してみると、お兄ちゃんが「うん、似合う」と言いました。

「髪の長さが違う」

「また、元気になったら伸ばせばいいさ」

「うん」

そのワンピースを買って、歩いていると、足が痛くなってきました。
こんなに長い時間歩いたのは、久しぶりでしたから。

見るものがなくなって、デパートの中の喫茶店でパフェを食べました。
他の席は女の子ばかりで、集まる視線に男性陣は居心地が悪そうでした。
わたしは、お兄ちゃんが一番格好良い、と内心思いました。

パフェを一番先に平らげたUが、提案しました。

「どないする? これからカラオケでも行こか」

「いいねー、いこーいこー」

「俺の行きつけんとこにしようか?」

VとYさんも乗り気でした。

「アニメの歌は禁止やで」

「え〜?」

Uに冷たく釘を刺されて、Yさんがしょげました。

「○○、どうする?」

お兄ちゃんが囁いてきました。

「うん……」

わたしが目をしょぼしょぼさせているのに気づいたのか、
お兄ちゃんがみんなに言いました。

「ちょっと歩き疲れたから、今日はもう失礼します」

「えー帰っちゃうのー?」

「V、無理言うたらアカンで。残念やけど、ここで一回解散にしよ」

Yさんが記念写真を撮って、解散しました。
といっても、その場を去ったのは、わたしとお兄ちゃんだけでした。
たぶん、残った4人でカラオケに行ったのだと思います。

「お兄ちゃん」

「なんだ?」

「ごめんなさい。疲れやすくて……。まだこんな時間なのに」

「気にすんな。今日は賑やかだったからな、俺もちょっと疲れた」

「お兄ちゃんも、UやVみたいな、元気な子のほうがいい?」

「バカだな。そんなこと気にしてたのか。
 UちゃんもVちゃんも元気で面白いけど、お前が一番面白いよ」

家に帰って、まずお風呂に入りました。寝てしまいそうだったからです。
頭を洗いながら、こっくりこっくりしてきました。
風呂場の外から、お兄ちゃんの声がかかりました。

「○○ー、風呂場で寝るなよー! 風邪ひくぞー!」

「ふにゃ」

「寝てるのかー?」

返事をしているつもりが、舌が回っていなかったようです。
お兄ちゃんが入ってきて、頭を流して、バスタオルで拭いてくれました。

翌朝気が付くと、ちゃんと自分のベッドに寝間着を着て寝ていました。
あれ?としばらく考えて、ゆうべ風呂場で寝てしまったことを思い出しました。

1階に降りていくと、もう朝食の支度ができていました。

「おはよう、○○。起こしに行こうかと思ってたんだ」

「おはよう、お兄ちゃん……」

「ん?」

「……ゆうべ、わたしの裸、見た?」


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