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パジャマパーティーには、自分のお気に入りのパジャマと、
何か遊ぶものを持参することになりました。
土曜日の午後、Vの家に行くと、お母さんが出迎えてくれました。
「○○ちゃん、いらっしゃい。また来てくれて嬉しい。
Uちゃんはもう来てますよ」
2階に案内されて、初めてVの部屋に入りました。
それまでは、離れの応接室でお喋りすることが多かったのです。
「V、こんにちは」
「○○ちゃーん、ちょっと待ってねー」
VとUは、格闘ゲームの対戦の真っ最中でした。
Vのキャラが、宙に浮かされてボコボコにやられました。
「Uちゃんずるいー」
「へへーん、気をそらすほうが悪い。
Vじゃ勝負にならへんなぁ。
○○、アンタも早うパジャマに着替え」
「……昼間からパジャマを着るの?」
「パジャマ着いへんかったらパジャマパーティーにならへんやろ?」
「それもそうね」
そう返事しながら、わたしは内心動揺していました。
Uは思ったよりも子供っぽい、クマさん模様のパジャマでしたが、
Vが着ていたのは、ひらひらのフリルが無数に付いたドレスのようでした。
「……V、それもパジャマなの?」
「うん、大パパが買ってくれたのー。かわいいでしょー?」
「そ、そうね……」
あまり深く追及しないほうが良さそうでした。
わたしは部屋の隅に行って、ワンピースを脱ごうとしました。
ハッ、と気配に振り向くと、Uが目と鼻の先に居ました。
「そこで、なにをしてるの?」
「いやー、気にせんとき。続けて続けて」
「見られてると、脱ぎにくいんだけど」
「女同士やん、かめへんかめへん」
「U、なんだか、目がやらしいよ?」
Uの目に倒錯的なモノを感じて、思わず胸を隠しました。
「ぶわははははは! アンタ考えすぎや。わたしはノーマルやで」
「……ホントに?」
「ホンマやて。しゃーないなぁ」
ぶつぶつ言いながら、やっとUが向こうに行きました。
わたしは素早く、お気に入りのパジャマに着替えました。
クッションに腰を下ろして、3人が向き合いました。
「○○……ちょっと聞いてエエか?」
「なに?」
「そのパジャマ、色といい柄といい、男モンにしか見えへんのやけど……」
「うん」
「ちゅうことは、それ兄ちゃんのパジャマか?」
「お兄ちゃんが昔着てた。
小さくなって着られなくなったから、わたしが貰った」
「ハァ…………」
なぜかUは頭を抱えました。
「……? Uも、お兄さんのお下がりのパジャマ、着たりしない?」
「するかーっ!」
Uは真っ赤になって否定しました。
「ねーねー○○ちゃん」
それにかまわず、今度はVがにじり寄ってきました。
「な、なに?」
「そのパジャマ、わたしのと交換しない?
わたし、かわいいのたくさん持ってるよ?」
Vのセンスを頭の中で想像し、答えを出すのに1秒もかかりませんでした。
「遠慮する」
「えー? 一番高いのでもいいからー」
Vがわたしの胸に覆い被さり、くんかくんか匂いをかぎました。
「……!」
わたしが身をよじって逃げる前に、Vの後頭部にUのチョップが炸裂しました。
「あぅぅぅ……」
Vが頭を押さえてうずくまるのと同時に、
Uもダメージを受けた手をぶらぶら振りました。
「お兄さんの匂いがするかどうか、たしかめただけなのにー」
「するわけないやろアホッ!」
長い一日になりそうでした。