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UとVは、黙って耳を傾けていました。

「どんなに熱くなっていても、心のどこかに、もうひとり醒めた自分が居る。
 心の底から悲しいとか、嬉しいとかいうことが、よくわからなかった。
 今でも、まだわからない。
 他の人の様子を観察して、うわべだけ心の動きを真似しているみたい。
 自分が、人間のフリをしている、ロボットみたいに思えるの。
 ……だから、知らないうちに人を傷つけても、それがわからないのかな、って」

Uが、難しい顔をして、腕組みしました。

「う〜〜ん。
 わたしには難しいコトはようワカランけどなぁ。
 アンタ、真面目すぎるんと違うか?」

Vが、不思議そうな顔で言いました。

「わたしも考えたんだけどー。
 ○○ちゃん、自信がないんじゃないかなー?」

「どういうこと?」

「だって、○○ちゃんすっごくアタマいいのに、
 ぜんぜん自慢しないでしょー?
 わたしだったらいばりまくりだよー」

「それもそうやな……。
 ○○、アンタお菓子食べるときも、最後にしか取らへんやろ。
 ホームルームでも、最後に指名されんと発言せえへんな。
 なんでや?」

「……わたしは……どのお菓子でも好きだから。
 ホームルームでは……わたしが何か言うと、議論が終わっちゃうから」

「まぁなぁ……アンタは正論しか言わんから、
 そこでキリが付いてしまうんや。
 『鶴の一声』て言われてるしなぁ」

「……?」

「今のは下らん噂やから、気にしんとき。
 アンタのこと面白うない思てるヤツもおるけど、
 積極的になってもエエと思うで」

後に性格診断のテストを学校で受けた時、
わたしは「自己評価が低い」と判定されました。

「まぁ……急に言われたかて無理やわなぁ。
 せやけど、生きていこ思うたら、誰かを傷つけるし、自分も傷つくんや。
 それはしゃーない。喧嘩しても、仲直りしたらエエやないか。
 兄ちゃんとは喧嘩したことないんか?」

「……覚えがない」

「アンタがわがまま言わへんからやろか……?
 わがまま言うたら嫌われる、て思うんか?」

「そう、かもしれない」

「アンタ、兄ちゃんのこと信じてるんやろ?」

「うん……Vには悪いけど、神様よりも」

「兄ちゃんは、アンタを人間やナイて言うんか?」

「……! そんなこと、言うわけない」

「せやったら、兄ちゃんの言葉を信じたり。
 ついでにわたしらの言うことも信じてエエで。
 アンタは人間や。ロボットがこんなことで悩むかいな」

「Uちゃん、いいこと言ってるー。
 わたしには思いつかないよー」

Vがうんうんとうなずきながら、身をもたせかけてきました。

「ね? あったかいでしょー?
 ○○ちゃんもあったかいよー。
 ロボットはもっと冷たいよー?」

わたしは言葉が出てこなくなって、大きく何度も2人にうなずきました。

「せや、気分転換にパーティーでもせえへんか?」

「……パーティー?」

「いいねそれー。久しぶりだよー」

「パーティーていうても、大げさなもんやない。
 Vん家にお泊まりするだけや。
 パジャマパーティーちゅうやっちゃ」

「V……良いの?」

「歓迎だよー。お菓子いっぱい準備しなくちゃー」

「前はちょくちょくVん家に泊まりに行ったんやけどな、
 遊びすぎやってうちのお母ちゃんに怒られてな、自粛しとったんや。
 ○○も一緒やったら、テスト勉強ちゅう大義名分もあるし。
 もうじきテストやから、一石二鳥や」

「泊まりがけで、勉強しながら、パーティーするわけね?」

「まぁ、勉強はオマケやけどな。
 アンタにいっぺんテストで点取るコツ聞きたかったしな」

「別に、コツは無いんだけど……」

「隠さんでエエやん。じっくり白状してもらうで。
 今度の土日でエエやろ?
 夜中まで遊べるなぁ。うしし」

UもVも、すっかりその気でした。
わたしは初めてパーティーに招待されて、期待に胸が膨らみました。


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