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憮然とした表情のcさんに気圧されたのか、
いつも元気なUも、言葉を挟んできませんでした。
「とにかく、座ってください」
「お前、俺を馬鹿にしてるのか?」
Yさんがのんびりした声で、助け船を出してくれました。
「喧嘩腰になってないで、君も座ったら?」
cさんはYさんを睨みつけました。
「なにモンだアンタ。なんでココにいる?」
「なんだろうな……○○ちゃんの友達の兄貴、ってトコかな。
○○ちゃんのお兄さんとも、いっしょに遊んだことがある。
ここにいるのは、君と同じで○○ちゃんが招待してくれたからだな」
声はのんびりしていても、Yさんの目は据わっていました。
いつもとぼけた様子なのに、こんな顔もできるんだ、と驚きました。
「もう注文してあるから、大人しくパフェを食べたほうがいい。
お店の人がこっちを見てる。喧嘩始めたら警察呼ばれるよ?
ここは上品な店だからね」
cさんは黙って、椅子にどっかと腰を下ろしました。
続いて片手をポケットに突っ込んだので、わたしは囁きました。
「ここは禁煙ですよ?」
cさんはわたしを見て目を
「わたし、小学3年生の時、気管支炎になりました。
今は治っていますけど、煙を吸ったら発作がおきるかもしれません。
その時は、救急車呼んでくださいね」
cさんは宙を仰いで、ポケットから手を出しました。
発作が起きるというのは大袈裟でしたけど、
小3のとき気管支炎を患ったことと、タバコの煙で咳き込むのは本当でした。
柔らかい椅子に座って、高級そうな木のテーブルを囲みながら、
くつろぐのとはほど遠い、緊張した雰囲気が張り詰めました。
やがてウェイトレスさんが、チョコレートパフェを4つ持ってきました。
一口食べて、Yさんが「やっぱり美味いね、ここのパフェは」と言いました。
「兄ぃ、食べたことあったんか?」
「ああ、夏休みに○○ちゃんにおごってもらった」
「兄ぃ! ○○に払わせたんか? サイテーやでそれ」
「はぁ? あかんのか?」
「当たり前やん、そんなら今日は兄ぃが払わな」
「U……今日はお礼のために来てもらったんだから、
お兄さんに払わせる訳にはいかないよ」
「う……それやったら、兄ぃの分は○○が払う、
○○の分は兄ぃが払う、ってことでどうや? 兄ぃも文句ないやろ?」
「あ、うん、俺はそれでいいよ。
おごってもらってばっかりじゃ気が引けるしね」
「えっと……はい」
やっと3人が笑顔になりました。
パフェをスプーンでかき混ぜている、残りの1人にわたしは囁きかけました。
「cさん、美味しくないですか?」
「あのなぁ……ちょっと訊いていいか?」
cさんの声は小さく、どことなく元気がありませんでした。
「はい」
「これはなんかの嫌がらせか?」
「え? 違います。お礼のしるしです」
「ハァァァ……なぁ、俺、そんなにイケてないか?」
「……どういう意味でしょう?」
「俺に近づくと、女は恐がるか媚びるかなんだけどなぁ。
お前はどっちでもない。ワケわかんねぇ」
「恐いです」
「ならなんで俺の言うとおりにしない?」
「恐いのと、言うことを聞くのは別です。
人の言いなりになるのは嫌です」
「……似てないと思ったけど、そういうトコは△△さんにそっくりだな」
「そうですか?」
お兄ちゃんの名前を耳にして、わたしはcさんの目を見つめました。
cさんは探るような目で、わたしを見返しました。
「お前は、俺のコトどんな男だと思う?」
唐突な質問に、わたしは面食らいました。
「あの……わたし、男の人をよく知りませんので、比較の対象が」
「△△さんと比べて、でいい」
「ここで正直に言って、良いんでしょうか?」
UとYさんが、聞き耳を立てているような気がしました。
「あの2人はどこ行っても付いてくるんだろう?
いいから言ってみな」
「そうですね……お兄ちゃんと比べると、笑い方がイヤらしいです」
「イヤらしい?」
「お兄ちゃんはにっこり笑いますけど、cさんは悪巧みしてるみたいです」
「…………」
「あと、デリカシーが無いですね。
お兄ちゃんもタバコを吸ってるみたいですけど、
吸ったり吸い殻捨ててるところを見たことがありません。
わたしがタバコが嫌いなことを、知ってるんだと思います」
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2020-09-12 15:21:17 (4年前)
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