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「……それって、テストに出るんか?」

「え? 出るわけないでしょう?
 でも、そろそろ勉強始めないと……寝る暇無くなる」

「アンタは勉強好きやなぁ……」

「好き? そんなこと、ない。
 今日は勉強会も兼ねてるから、しないとまずいかな、って」

「○○は毎日何時間ぐらい勉強してるんや?」

「平日は、6時間ぐらい」

「6時間! ……ウソやろ?」

「Uだって、同じだけ勉強してるでしょう?
 同じ授業、受けてるんだから」

「学校の授業は別や! 家での勉強!」

「家で勉強? してない」

Uは、信じられないといった顔で、まじまじとわたしを見ました。
Vも首を傾げています。

「じゃあじゃあ、宿題はいつするのー?」

「お昼休みとか休み時間に。教科書持って帰ると、重いから」

「へー。わたしは家で毎日2時間勉強してるけど、
 宿題やったらあんまり時間残らないよー」

Uが目を剥きました。

「V、アンタ、毎日予習復習してたんか?」

「うん。中学生になったんだから、勉強遅れるといけないでしょー?
 Uちゃんは何時間ぐらいしてるのー?」

「…………」

Uはあまり答えたくなさそうでした。

「なんや自分がみじめになってきてしもた。勉強、しよか」

3人とも、テーブルに教科書と問題集とノートを広げました。
ノートはそれぞれ、対照的でした。

Uのノートには、ぎっしりと板書内容が書き込んでありましたが、
字が汚くて読みとれません。余白は落書きだらけです。

Vのノートには、丸っこい字が整然と書き込んでありました。
マーカーを使って色とりどりに、必要以上の飾り付けがしてあります。

わたしのノートを覗き込んで、Uが質問してきました。

「○○のノート、板書と全然違うやないの。
 文を丸で囲って矢印とか引いてるんはどういう意味なん?」

「わたし、字を書くのが遅いから、黒板写してたら間に合わない。
 要点を抜き書きして、それぞれの関係を囲いや記号で表してる。
 KJ法もどき」

「けーじぇーほう、ってなんや?」

「昔、川喜田二郎という人が考えた、問題解決技法の一種。
 細かいデータを1つ1つ、小さなラベルに書き出して、
 関係あるラベル同士をグループにする。
 グループ全体を線で囲って、代表するラベルを作る。
 ラベル同士の関係を記号で表す。
 こうすると、雑多なデータを、1つの図にまとめられる。
 ノートを取るときには、これを頭の中でするから、
 正式なKJ法とは違うけど」

「……このノートあったら、テストは楽勝やな……。
 ちょっと見せてくれへんか?」

「うん。ノート作ってるあいだに、頭に入ってるから、
 テスト終わるまで貸してあげる」

「よっしゃー!
 その代わり、アンタが休んでた日のノート見てエエで」

「Uのノート……字が読めないんだけど」

勉強会は、Vのお母さんがおやつを持ってくるまで続きました。
わたしはいつも早寝していたせいか、目蓋が重くなってきました。

「V、いつ寝るの?」

「○○ちゃん、もう眠いのー?」

「夜はこれからやで?」

「うん……」

「じゃあ、先にお風呂に入ろー? もう入れるはずだよー」

「そやな、Vと風呂に入るんも久しぶりや。いしししし。
 どれぐらい成長したんか確かめんと。今日は3人で入ろ」

「Uちゃん笑い方がやらしーよー」

「3人一緒だと、狭くない?」

「ここん家の風呂場はめっちゃ広いねん。3人ぐらい平気や」

3人でぞろぞろと脱衣所に行きました。
風呂場は田舎の家と同じぐらい、広々としているようでした。

Vが真っ先に、ぱっぱっとパジャマと下着を脱ぎ散らかしました。
Vの体はふっくらしていて、予想以上に胸に量感がありました。
そのうえ、すでに陰毛がうっすら生えています。

わたしは急に、服を脱ぐのが嫌になってきましたが、
今さら帰るわけにもいきません。

わたしが背中を向けて、そろそろとパジャマを脱ぐと、
Uがだしぬけに後ろから胸に手を回してきました。

「……!」

わたしは悲鳴を、喉の奥に呑み込みました。


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