151:
「それで、続きは?」
わたしは震える声でお兄ちゃんに尋ねました。
「お兄ちゃん……どうしたの?」
お兄ちゃんは、食いしばっていた歯をゆるめて笑顔を見せました。
「ん? なにが?」
わたしがb君からの手紙を見せると、
お兄ちゃんは1枚1枚ゆっくりと時間をかけて目を通しました。
読み終えた便箋を封筒に仕舞って、お兄ちゃんはため息をつきました。
「ふぅ……この調子だと、手紙も本人もまた来そうだな……。
○○、お前の気持ちはどうなんだ?
正直なところ、b君をどう思ってる?
なんとも思ってないのか?」
お兄ちゃんが真剣そのものの声で、聞いてきました。
わたしは心を落ち着けて、考えました。
「最初は……なんとも思ってなかった」
「今は?」
「今は……会うと、とてもどきどきする」
言いながら、b君の瞳を思い出して、わたしは震えだしました。
「見つめられていると、落ち着いていられなくなって……。
足元がぐらぐらするような……」
お兄ちゃんが、わたしの顔を覗き込んできました。
「好きに、なりそうなのか?」
「……違う、と思う。目が真剣すぎて、怖い。
気持ちが強すぎて、わたしには、受けとめきれない」
「そうか……」
お兄ちゃんはしばらく、黙って考え込んでいました。
「このまま、放っておくわけにはいかないな。
b君はすっかりその気になってると思うぞ」
「うん……」
このまま家に籠もっていても、駄目でしょう。
「兄ちゃんがb君と話をしてやろう。
b君の気持ちも、本人の口から確認したいし……」
「お兄ちゃんが会うの……?
でも、わたしのことだから、わたしが言わないと……」
「ん、そりゃそうだけど、お前、b君の前でちゃんと話ができるのか?
思い出しただけで震えてるようじゃ、無理なんじゃないか?」
「…………」
ひとりで解決できないのが情けなくて、わたしは唇を噛みました。
「困った時ぐらい兄ちゃんを頼れ。
心配すんな、b君の話もちゃんと聞いてみるから。
そうと決まったら善は急げだ」
お兄ちゃんはわたしをベッドに下ろし、立ち上がりました。
「クラスの連絡網はどこにある?」
「電話の所に貼ってあるけど、電話するの?」
「ああ、ちょっと待ってろ」
お兄ちゃんは部屋を出て、電話を掛けに行きました。
戻ってくると、わたしをベッドに寝かしつけました。
「少しはあったまってきたみたいだな。体冷やしたら駄目なんだろ?
今日は晩飯まで寝てろ。帰ってきたら久しぶりにご飯作ってやるから」
お兄ちゃんは笑顔で手を振って、部屋を出ていきました。
でも、わたしは胸騒ぎがしました。
出ていくときのお兄ちゃんは、目だけが笑っていなかったからです。
わたしは起き出して寝間着を脱ぎ、外出着に着替えました。
お兄ちゃんの後を追いかけようと思いましたが、
よく考えると、どこに行ったらいいのかわかりません。
わたしは1階に下りて、電話の周りをうろうろと歩き回りました。
不安がピークに達したところで、お兄ちゃんが帰ってきました。
わたしが玄関に駆けつけると、驚いた顔をしました。
「○○、どうしたんだ? 寝てなかったのか?」
わたしはお兄ちゃんの全身に、くまなく視線を走らせました。
どこも怪我はしていません。両手も綺麗です。
「おかえりなさい」
そう言って、靴を脱いで上がってきたお兄ちゃんの胸に、頬を当てました。
「……! どうしたんだ?」
お兄ちゃんは怪訝そうな声をあげ、わたしの肩を抱きました。
お兄ちゃんの服が汚れておらず、血の匂いもしないので、
わたしはホッとしました。
「喧嘩してるんじゃないか、って心配だった」
「バカだな……怪我なんてさせてないよ。
じっくり話をしたら、b君もわかってくれた。
もう付きまとわれることはないから、安心していいぞ」
(・▽・)ホッ・・・
2017-11-13 19:47:05 (6年前)
No.1
良かた良かた
2018-01-22 23:11:05 (6年前)
No.2