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「……?」
「なんですかー?」

「あのね……Uには、彼氏居るのかな?」

「彼氏?」
「居ないと思いますよー、いつもいっしょだけど、そんな話したことないしー」

「そう……」

お兄さんは、ホッとしたようでした。

「どうしてそんなコト聞くんですかー?」

「う〜ん。ちょっとね。アイツ、最近えらく突っかかってくるんだ。
 オタクだとか無茶苦茶言うし、部屋を掃除しろってキレるし。
 前はもっと素直に甘えてくれたんだけどね……」

お兄さんは、淋しそうな顔になりました。

「そうなんですかー。どうしてでしょーねー?」

Vは首をひねっています。

「あの……」

「なに? ○○ちゃん」

「Uはお兄さんのことが、好きなんだと思います」

お兄さんは、飲みかけていた水をぶわっと吹き出しました。

「げほげほげほ……なんやて?」

「別に、変な意味じゃなくて。
 好きだから、素直になれないんだ、と思います」

「……? そうかな?」

「なんとなく、ですけど」

「○○ちゃん、さっすがー。お兄さんが居るとわかるんだねー」

「そうか……ありがとう。
 ところで、2人とも、電話番号教えてくれない?」

「え……? 電話番号なら、連絡網のプリントを、Uも持ってますけど」

「アイツに聞いても教えてくれないよ。
 またUのコトで相談するかもしれないからさ、できたら」

「そうですか」

わたしとVは、自宅の電話番号をお兄さんに教えました。

「それと、今の話は、Uにはナイショにしてくれる?
 知られたら殴られるからさ」

「ナイショの話ですかー? それじゃあ、指切りしましょー」

中学にもなって指切りは無いんじゃないか、と思いましたが、
Vに促されて、3人はそれぞれ小指を絡めました。

「いいですかー?
 ゆーびきーりげーんまんうーそついたらダーメですよー?」

お兄さんとわたしは、気の抜けたようなVの声に脱力しました。

「……V? 針千本、呑ませるんじゃないの?」

「やだー○○ちゃん、針を千本ものめるわけないでしょー?」

「……言われてみればそうね」

お兄さんはもう、何も言いませんでした。

やがて、Uがトイレから帰ってきました。

「3人でなにコソコソしてるん?
 わたしの悪口言うてたんやないやろな?」

「U、わたしがそんなことすると、思ってる?」

「……あのなぁ、冗談やて」

Uに内緒の話をしたことで、少し気がとがめました。
でも、悪口を言っていた訳ではない、と自分を納得させました。

もうすっかり遅くなっていたので、お兄さんは遠回りして、
わたしとVを家まで送り届けてくれました。

その夜、お兄ちゃんから電話が掛かってきました。

「○○、元気だったか?」

「うん、お兄ちゃんも元気だった?」

「その声聞くと、今日の遊園地は楽しかったみたいだな」

「うん。遊園地だけじゃなくて、教会にも行った」

「教会? どういうことだ?」

わたしはお兄ちゃんに、教会の日曜学校とオルガンのお兄さんのこと、
遊園地とUのお兄さんのことを話しました。

「それで……そのXさんとYさんってのは、
 お前に何も変なことをしてないんだな?」

「変なことって?」

「……心当たりが無いなら良いんだ。
 やっぱり、お前も友達が出来て明るくなったみたいだ。嬉しいよ」

「……でも、遊園地にはやっぱり、お兄ちゃんと行きたかった」

「ん……いつか、行けるさ」

「…………」

それから数日後、Uが学校に写真の束を持ってきました。

「ほれ。アンタの分は注文通り2枚ずつや」

「ありがとう」

お兄ちゃんに1枚ずつ送るために、わたしの分は2枚ずつ焼いてくれるよう
頼んでいました。

Vが写真を取りあげて、歓声を上げました。

「わーすごくきれいに撮れてるねー!」

「ホント。でも、ずいぶん早く出来たね」

「兄ぃは自分で現像できるさかいな。こういう時だけ便利や」

わたしは、くすくすと笑いました。

「……? 何が可笑しいねん?」

「Uって、お兄さんが好きなんだなぁ、って」

「……っ! なんでやねん!」

いつものように、取り留めのない話をしながら、家に帰りました。
すると、日暮れ時に、電話が鳴りました。

「はい、××です」

「あ、○○ちゃん? Yです。ちょっと、出て来れない?」

「え? 今からですか?」

「うん。こないだの写真で、Uには見せてないのがあるんだ。
 友達の写真ばっかりたくさん撮ったのがばれると、
 アイツ拗ねるからさ」

「わかりました。どこに行けば良いですか?」


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