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受験生のXさんの予定に合わせて、数日後に買い物に行くことになりました。
教会からの帰り道、いつもの3人で歩きながら、キャンプの話を聞きました。

わたしがb君とお兄ちゃんとのことを話すと、Vの瞳がきらきらしました。

「うわー、かっこいー、白馬の王子様だねー。
 早く○○ちゃんのお兄さん見てみたいよー!
 でもー、どうしてわたしも呼んでくれなかったのー?
 b君とUちゃんの対決見たかったー」

「アホ。映画やないんやで。アンタがおったらややこしゅうなるだけや」

「うー差別だよー」

Vのお兄ちゃんへの傾倒が、少し気になりました。

「Vは、オルガンのお兄さんが、好きなんじゃなかった?」

「うん大好きー、おにーちゃん優しいし、ピアノもうまいんだよー。
 でもー、最近受験勉強があるからー、っていって
 あんまり遊んでくれなくなったんだー」

「ピアノのレッスン、頼んだんでしょ? よく引き受けてくれたね」

「だってー、わたしとは遊ぶ暇ないっていうくせにー、
 ピアノは毎日弾いてるんだっていうからー、教えてってお願いしたのー。
 大パパも頼んでくれたんだよー」

孫に甘いあのおじいちゃんに頼まれたのでは、とても断れなかったのでしょう。
Xさんも大変だなあ……と思いました。

「今日はこのまま解散か? 兄ちゃんが待ってるんやろ?」

「お兄ちゃん、今日は友達と遊びに行ったから……。
 久しぶりにパフェ、食べに行かない?」

「いこーいこー」

わたしは食事制限の関係で、外食があまりできませんでしたが、
アイスクリームなら問題ありませんでした。

まだ明るいうちに家に帰り、夕食の支度をしましたが、
やっぱりお兄ちゃんは帰って来ず、ひとりで食べました。

わたしの料理の腕前がまだまだなのか、お兄ちゃんが居ないせいか、
あまり美味しくありませんでした。

ずいぶん遅くなって、ベッドで本を読んでいると、玄関で物音がしました
お兄ちゃんだ、と思って立ち上がり、部屋のドアを開けようとして、
お兄ちゃんの足音がしないことに気付きました。

お兄ちゃんが立てるスリッパの音を、わたしは聞き分けることができます。
足音がしないということは……泥棒? もしかして……b君?
わたしは硬直しました。

そーっとノブを回し、部屋から出て、階下を覗いてみました。
お兄ちゃんが、抜き足差し足で階段を上がってくるところでした。

「……おかえりなさい、お兄ちゃん、何してるの?」

「!……あ、○○、ただいま。起きてたのか」

お兄ちゃんは妙にそわそわしているようでした。
上がってきたお兄ちゃんの息が、わたしにかかりました。

前に嗅いだことがある、臭いにおいがしました。お酒のにおいです。

「お兄ちゃん……お酒飲んできた?」

「え? ん、ああ、ちょっとだけな……」

お兄ちゃんはお酒が顔に出ない質ですが、
とてもちょっとだけ、というにおいではありませんでした。
わたしは顔をしかめて言いました。

「すごいにおい……。どこで飲んだの?」

「Aん家でさ。Aが良い酒あるっていうもんで……つい……」

わたしはお兄ちゃんの胸に顔を近づけました。

「煙草もいっぱい吸ってきたんでしょ?
 体に悪いから、吸わないほうが……」

服のにおいを嗅ぐと、かすかな汗くささと、甘い……香りがしました。
驚いたわたしが胸に抱き付いて鼻を埋めると、お兄ちゃんが声を上げました。

「お、おい! 階段で危ないだろ」

わたしはよろよろ後じさりました。

「……お兄ちゃん……ウソ、ついた?」

「へ? なんのことだ?」

「Aさんと遊んできた、ってウソ。服に、香水のにおいがついてる。
 女の人といっしょだったんだ……」

お兄ちゃんの顔を見ていたくなくて、わたしは自分の部屋に入り、
バタンと扉を閉めて、ふだん掛けない鍵を下ろしました。

「おい! ○○、話を聞いてくれ!」

どんどん、とドアを叩く音がしましたが、わたしは布団をかぶって、
耳をふさぎました。

翌朝の目覚めは最悪でした。自分の目蓋が腫れているのがわかりました。
顔を洗おう、と思って起き出し、ドアに耳を当てました。

人の気配がしないことを確かめて、鍵を開けドアを押しました。
重くて動きません。渾身の力を込めて押すと、少しだけ開きました。
隙間から顔を出して見ると、お兄ちゃんがドアにもたれて寝ていました。


妹に権利なくない❓
2016-05-23 13:23:16 (2年前) No.1
妹が口出しすることではない
2017-04-11 05:44:19 (1年前) No.2
同意するけど嘘ついたことがショックなんやろ
2017-07-22 05:51:04 (1年前) No.3
うーむ・・・・。
2017-11-13 22:14:00 (10ヵ月前) No.4
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