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昼休み、わたしはいつものように自分の席でパンを食べながら、
本を読んでいました。
仲良しグループごとに分かれてお弁当を広げるクラスメイトたちとは、
めったに口を利くこともありません。
目の前の机に、弁当箱が置かれました。
口をもぐもぐさせながら視線を上げると、UとVが来ていました。
「……(どうしたの?)」
小首を傾げてみせると、Uが返事をしました。
「今日は久しぶりに三人でお昼食べよかと思ったんや。
話もあるしな」
空いている椅子を持ってきて、三人分の席を作りました。
「ホントに久しぶりね。
U……あなた目の下に隈ができてる。
睡眠不足なんじゃない?」
「もう嫌っちゅうほど勉強漬けや……。
あんまりアホな学校にしか受からんかったら
兄ぃに笑われそうやしな。
…………?
○○、後ろの子、あんたに用があるんとちゃう?」
言われて振り返ると、hさんがもじもじしていました。
「なに?」
「あのあのあの……わたしもごいっしょしていいデスカ?」
わたしはUとVにちらりと視線を投げました。
「ここはアンタの席なんやから、アンタしだいや」
「Vは?」
Vがこくこくと首を縦に振ります。
人見知りするVは、hさんの登場に硬くなっているようでした。
「hさん、どうぞ」
椅子を勧めると、hさんはおっかなびっくり腰を下ろしました。
「○○にもこのクラスに友達ができたんやな」
「そうなんだー」
Vはどことなく寂しそうな、複雑な面持ちでした。
hさんがわたしの友達と言えるのかどうか、正直なところ微妙でした。
帰り道によくいっしょにはなりますが、
休み時間に親しくお喋りしていたわけではありませんでした。
それでもhさんの前で、友達じゃないとは言えません。
「よ、よろしくお願いしますデス」
ペコペコと頭を下げるhさんを見て、
わたしの周りに集まるのはどうしてこう変わった人ばかりなんだろう、
と内心ため息を吐きました。
「U、V、こちらがhさん。クラスメイトで最近親しくしてもらってる。
hさん、こっちがUで、あっちがV、1年の時からのわたしの親友」
簡単に紹介を済ませて、食事を再開しました。
なんとも言えないぎこちない雰囲気でした。Vはきょろきょろと挙動不審で、
いつも元気なUも、hさんに気を遣っているのか言葉少なです。
肝心のhさんはもう見事なくらい上がってしまって、
食事中だというのにセミロングの髪をしきりにかきあげています。
わたしが口火を切らなければ、緊張が解けそうにありません。
「えっと……hさんといっしょにお昼を食べるのは、初めてね」
「そうやったんか?」
「あのあのあの……××さん、いつも本を読んでらっしゃいマス。
お邪魔じゃないかナと……」
わたしは休み時間や昼休みに、ずっと本を読んで過ごしていたのです。
「あっ、ごめんなさい。気が付かなくて。
それから、苗字で呼ばなくていいよ。呼び捨てにして」
「はい、○○さん」
だめだこりゃ、と思いました。
「そういえば、Uはなにか話があったんじゃなかった?」
「あ、うん……クリスマスにパーティーをしようかと思うてな。
アンタの都合を聞きたかったんや」
UはVとhさんにちらちら視線を送りながら訊いてきました。
Vはどこか遠くに視線をさまよわせていました。
1年前のクリスマスに、VはXさんと婚約したのでした。
そのことを思い出しているのでしょう。
Vがクリスマスを楽しく過ごせるようにしないと、と思いました。
「お兄ちゃんはクリスマスにお仕事だって。
だからわたしは空いてるよ」
「そうなんかぁ……そんなら三人でパーッとやろか」
Uは珍しく煮え切らない様子でした。
お兄ちゃんとgさんの別離と家出の話を伝えていたので、
わたしの心情を思いやっていたのでしょう。
わたしの横で、hさんがもじもじしました。
物欲しそうな目つきで、なにか訴えかけてきます。
なんとなく言いたいことが読めました。
「hさん、どうかした?」
「あのあの……その……わたしも、パーティーに参加するというのは……
やっぱりだめデスカ?」
わたしとUとVが、視線を交換しました。
なんとも断りづらいのですが、hさんが加わるとなると、
Vが緊張してしまって、パーティーの趣旨が台無しになりそうです。