267:



最悪の想像はしていても、好きと言われる心の備えはありませんでした。
わたしは何度もぱちぱちまばたきして、お兄ちゃんの顔を見ました。

ホント?

それだけ口にするのがやっとでした。
お兄ちゃんは目を細めて、優しい声で言いました。

「ああ……本当だ。ずっと前から、好きだった」

わたしはまだ当惑していました。

「わたし、変態なのに……良いの?」

お兄ちゃんはわたしを胸にのせて、ぎゅっと抱きしめてくれました。

「俺だって同じさ。お前のこと、心の中で裸にしたりした。
 ……嫌じゃないか?」

「嫌じゃ、ない……」

それ以上は、言葉になりませんでした。
目頭が熱くなって、涙があふれてきました。
こらえる間もなく、ぽろぽろこぼれ落ちました。

「○○? 泣いてるのか? どうした」

わたしが泣きだして、お兄ちゃんは慌てたようです。
わたしの顔を覗き込もうとしました。
わたしはうつむいて、お兄ちゃんの視線から逃れました。

「違うの……うれしくて、うれしくて……」

お兄ちゃんが体を入れ替えて、わたしを仰向けに寝かせました。
目をつぶっていると、額の前髪が指で払われました。

閉じたまぶたを、柔らかい感触が順番に覆いました。
お兄ちゃんの唇でした。そこだけボッと熱を感じました。
唇が移動して、目尻の涙の跡を舐めました。

「しょっぱいな」

お兄ちゃんの息が、顔を撫でました。
お兄ちゃんはわたしの上で四つんばいになっているようでしたけど、
少しも重みはかかっていませんでした。

「○○」

お兄ちゃんの呼ぶ声に、わたしはまぶたを開きました。
お兄ちゃんは首を挙げて、どこか遠くを見ていました。

「お兄ちゃん?」

「俺たち……兄妹なんだよな」

「……うん」

「お前が彼氏を作ってくれたら……諦められると思ってた。
 いい兄貴になって、祝福してやろうって……。
 今ならまだ、引き返せるんだぞ?」

「彼氏なんか……作れない。
 わたしが触れられるのは、お兄ちゃんだけ。
 話してなかったけど……夏休みの前、痴漢にあったの」

「なにぃ?」

カッと見開かれた両眼に、射すくめられました。

「だいじょうぶ。ちょうど助けが入って、無事だった。
 でも、それから、男の人に触られると、体が硬直するようになっちゃった」

「その痴漢はどうしたんだ?」

「逃げた」

「ちっくしょう……」

事件の成り行きを大幅に省略して、f先生の名前は出しませんでした。
お兄ちゃんが知ったら、騒ぎになるかもしれないと思ったからです。
お兄ちゃんは怒りに身を震わせていました。

わたしの首の後ろと背中に、お兄ちゃんの腕が回されて、
骨がきしむほど強く抱きしめられました。

わたしは身動きひとつできませんでしたけど、
その痛みと、汗の混じった匂いが心地よくて、陶然としました。

ふっと重みが消えました。
見上げると、そこにお兄ちゃんの優しい笑顔がありました。
お兄ちゃんの指が、そっとわたしのまぶたを下ろしました。

冬だというのに、わたしは汗をかいていました。
わたしが息を詰めて待っていると、額と頬に、ちゅっちゅっとキスされました。
思わず息を吐くと、その唇を奪われました。

最初はくすぐったい、触れるだけの口づけでした。
だんだんと強くなってきて、唇がしびれるようでした。
口を開けて息継ぎしようとしたら、舌が入ってきました。

わたしはお兄ちゃんの舌に、自分の舌を合わせました。
舌が絡んで、煙草の苦い味が少ししました。
お兄ちゃんの舌はとても長くて、わたしの口の中を動き回りました。

「んふっ……んふ……」

息をするのを忘れてしまいそうでした。
まぶたの裏が白くなって、意識が閃光に満たされるようでした。

はだけたパジャマの下に、お兄ちゃんの硬くなったものが当たっていました。
お兄ちゃんが興奮している、と思うと、歓喜に心が震えました。
わたしは両腕をお兄ちゃんの首に回して、力いっぱいしがみつきました。

長い長いキスが終わったとき、わたしは肩で息をしていました。
ドッドッと心臓が高鳴って、空気に触れた肌が、ぴりぴりとしびれました。


ついに来ましたか
2017-07-23 11:01:15 (11ヵ月前) No.1
残り127文字