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G姉ちゃんの家は、お婆ちゃんの家より小さい、住宅街の中の一軒家でした。
初めて会うG姉ちゃんと旦那さんと、従弟のHクンが迎えてくれました。

G姉ちゃんは、お母さんによく似ていました。
夫婦ともに学校の先生で、縁付きの眼鏡をかけています。
わたしは、白いワンピースの皺を伸ばして、挨拶しました。

1歳年下のHクンは、お兄ちゃんより華奢でしたが、顔立ちがそっくりでした。
雰囲気も似ていて、まるで、数年前のお兄ちゃんを見ているようでした。

「××姉ちゃん、はじめまして……」

わたしは末っ子で、前から弟が欲しかったので、思わず微笑みながら、
自分とあまり背の変わらないHクンの肩に、手を置いて言いました。

「はじめまして、Hクン。よろしくね」

Hクンは照れているのか、赤い顔をしてそっぽを向きました。

挨拶が済んで、F兄ちゃんが帰った後、リビングダイニングに集まって、
みんなでケーキを食べながら紅茶を飲みました。

G姉ちゃんの家は、調度品の趣味も、洋風のようでした。
わたしは、同年代の子供の居る、余所の家庭を見たことが無かったので、
物珍しくてきょろきょろしました。

お兄ちゃんとHクンが、受験勉強の話を始めました。
二人は前からお互いに親しかったようです。
Hクンが、まだ5年生なのに、私立中学校を目指して受験勉強している、
と知って、わたしは驚きました。

Hクンが、口をとがらせて言いました。

「ほんまにやんなるわ。
 いっつも勉強勉強ってうるさいねん。
 勉強のオニやで」

G姉ちゃんが怒った口調で返しました。

「なにいうてんの!
 あんたのためやないの。
 遊んでばーっかりおったら、後で苦労するねんで」

わたしは、今にも喧嘩が始まるのではないか、と身を硬くして、
HクンとG姉ちゃんの顔を、交互に見ました。
二人とも、言葉はきつくても、目が笑っていました。
旦那さんも、にやにやしているだけです。

お兄ちゃんが口を挟みました。

「H、そのへんにしとき……。
 ○○はこっちの言い方にまだ慣れてへんねん。
 喧嘩してんのか思うてびっくりしとるで」

お兄ちゃんの口調は、わたしと話す時と違って、方言丸出しでした。

Hクンが済まなそうに言いました。

「○○姉ちゃんゴメン。
 別に喧嘩してへんから。いっつもこんな感じやねん」

わたしは頷きましたが、急に胸がふさがって、大好きなショートケーキの
味がしなくなりました。
なぜだか、幸せな家族の団欒を、外からガラス越しに眺めているような、
そんな気がしました。

お兄ちゃんに目をやると、お兄ちゃんも、どこか遠い目をしていました。

お茶会が終わると、年上のいとこたちが到着しました。
I兄ちゃんとJ兄ちゃんは兄弟で、K姉ちゃんとL姉ちゃんは姉妹でした。
ワゴン車を運転して来たのは、大学生のI兄ちゃんでした。

I兄ちゃんとJ兄ちゃんは、微妙にお兄ちゃんと似た顔をしていましたが、
歳が離れているせいか、Hクンに感じたような親しみは覚えませんでした。

K姉ちゃんとL姉ちゃんは、柄が同じで色違いの浴衣を着ていました。
今夜、この近くで夏祭りがあるそうです。
いとこたちが集まったのは、そのせいでした。

K姉ちゃんは、わたしの分の浴衣と帯も持って来ていました。
K姉ちゃんが前に着ていたという、ピンク地に金魚の柄の浴衣と、
オレンジ色の帯でした。

K姉ちゃんとL姉ちゃんが、奥の部屋にわたしを連れて行って、
着せ替え人形で遊ぶように、二人掛かりでわたしを着替えさせました。

K姉ちゃんの浴衣は、わたしには大きすぎました。
K姉ちゃんは、わたしの胸にバスタオルを巻いた上に浴衣を着せ、
胸の所で折って裾を上げてから、帯を締めました。
それから髪を編み上げて、針金細工のような髪飾りで留めてくれました。

リビングに出ていくと、お兄ちゃんや兄ちゃんたちの視線が集まりました。
お兄ちゃんは、目を丸くして言いました。

「おお、すげぇ可愛いじゃん。
 やっぱ浴衣はいいなぁ」

うんうん頷くお兄ちゃんに、K姉ちゃんが声を掛けました。

「わたしらのことはどうでもええのん?
 めっちゃむかつく〜」

「ははは、怒らんといて。姉ちゃんたちもよう似合うてるで。
 ○○は浴衣着るの初めてやからな。サービスやサービス」


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