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「…………」

わたしはZ君の涙に、ショックを受けていました。
そこでUからまで怖いと言われては、もう言葉がありません。

「そんな顔せんでエエ」

「え」

Uらしくもない優しげな声に、思わずUの顔を見直しました。

「あんたは『鉄仮面』なんて呼ばれてるけどな、
 ホンマはめっちゃわかりやすいで。
 ちょっと見ただけやったらわからへんやろけどな。
 わたしらの目はごまかせへん。
 兄ちゃんの話するときは口が緩んで目が優しいなる。
 親の話すると目がきつうなる。
 興味ないときは遠い目しとる。
 乗ってきたら目が据わる。
 V、アンタかてわかってたやろ?」

Vは胸を張って得意そうに答えました。

「わかるよー。○○ちゃん、あんまり口でしゃべらないけど、
 目でいっぱいしゃべってるー」

「……2人とも、お兄ちゃんと同じこと言ってる」

「そおか? やっぱし○○の兄ちゃんはよう見てるやん」

「○○ちゃんはお兄さんがいていいなー」

「うん」

あたたかいモノが、胸にこみ上げてきました。

「アンタのことよう知らんヤツに怖い思われたかて気にすることあれへん。
 アンタは不器用やけどなぁ……
 人前でヘラヘラして裏で陰口たたくようなアホよりよっぽどマシや。
 アンタ見て怖い思うのんは、心にやましいことがあるからや。
 わたしはアンタみたいなん、好きやで」

「わたしも好きー」

「ありがとう……」

それだけ口にするのが、精一杯でした。
わたしは良い友達を持った、としみじみ思いました。
目頭が熱くなり、涙がこぼれそうでした。

Uが横を向いて、照れくさそうな顔をしました。

「泣いたらアカンて……わたしでも抱き締めたくなるやんか」

「じゃあわたしがー」

Vが正面から、がばっと飛びかかってきました。
わたしはとっさに、弁当箱を横に退避させました。
わたしの顔が大柄なVの胸に埋まり、鼻と口がふさがれました。

「うぐぐぐ……」

「あほーーっ!」

ごんごんっと、げんこつが降ってきました。

「Uちゃん、グーはいたいよー」

Vが頭を押さえて涙目になりました。

「あやしいことしてるんやない!」

「……U、どうしてわたしまで殴るの?」

せっかくの感動が台無しでした。


親友っていいなぁ・・・。
2017-10-15 21:17:26 (6年前) No.1
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